生
七日間 - 宮本英司 容子
true2020
2022. 3. 30. 14:39
◑ 七日間
- 朝日新聞「声」欄に掲載された詩.
神様お願い この病室から抜け出して 七日間の元気な時間をください
一日目には台所に立って 料理をいっぱい作りたい
あなたが好きな餃子や肉味噌 カレーもシチューも冷凍しておくわ
二日目には趣味の手作り 作りかけの手織りのマフラー ミシンも踏んでバッグやポーチ 心残りがないほどいっぱい作る
三日目にはお片付け 私の好きな古布や紅絹 どれも思いが詰まったものだけど どなたか貰ってくださいね
四日目には愛犬連れて あなたとドライブに行こう 少し寒いけど箱根がいいかな 思い出の公園手つなぎ歩く
五日目には子供や孫の 一年分の誕生会 ケーキもちゃんと11個買って プレゼントも用意しておくわ
六日目には友達集まって 憧れの女子会しましょ。お酒も少し飲みましょか そしてカラオケで十八番を歌うの
七日目にはあなたと二人きり 静かに部屋で過ごしましょ。大塚博堂のCDかけて ふたりの長いお話しましょう
神様お願い七日間が終わったら私はあなたに手を執られながら静かに静かに時の来るのを待つわ。静かに静かに時の来るのを待つわ。
▶ 宮本英司
1947年、愛媛県生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、大手製パン会社に就職。72年、学生時代から付き合っていた容子さんと結婚。2児の父親となる。2018年1月19日、45年間連れ添ってきた妻が他界。生前に綴った詩「七日間」を新聞の投稿欄に応募したところ、掲載されて大反響となる。現在、愛犬「小春」ちゃんと暮らしている。神奈川県在住。